Sanseido Dictionary
たり
たり (助動 )活用 たら たり たり たる たれ たれ 〔完了の助動詞 「つ 」の連用形 「て 」に動詞 「あり 」の付いた 「てあり 」の転 〕現代語の完了の助動詞 「た 」の古語形 。動詞および動詞型活用の助動詞の連用形 (ならびに音便の形 )に接続する 。① 動作 作用がすでに終わって ,その結果が存続していることを表す 。…た 。…ている 。「我はもや安見児得 たり 皆人の得かてにすといふ安見児得 たり 」〈万葉集 95 〉「おもしろく咲き たる 桜を ,長く折りて ,大きなる瓶にさし たる こそをかしけれ 」〈枕草子 4 〉② 動作 作用が引き続いて行われている意を表す 。…ている 。…てある 。「ひさかたの月は照り たり 暇 (いとま )なく海人 (あま )の漁 (いざ )りは灯 (ともし )合へり見ゆ 」〈万葉集 3672 〉③ 動作 作用が完了したことを表す 。…た 。…てしまう 。「門をたたきて ,くらもちの皇子おはし たり と告ぐ 」〈竹取物語 〉「飼ひける犬の ,暗けれど ,主を知りて飛びつき たり けるとぞ 」〈徒然草 89 〉
たり
たり (助動 )活用 たら たり (と ) たり たる たれ (たれ ) 〔格助詞 「と 」に動詞 「あり 」の付いた 「とあり 」の転 〕古語の断定の助動詞 。体言に接続する 。物事の資格 存在 状態などを強く指定する意を表す 。…である 。…だ 。…なのだ 。「況んや智恵高貴にして三千の貫首 たり 。今は徳行おもうして一山の和尚 たり 」〈平家物語 2 〉「内裏の御代 たら んには関白まづおはするをさしおき 」〈保元物語 上 〉「神明の御計らひ と して八道の謀叛の心も和らぎ 」〈源平盛衰記 13 〉〔(1 )中古の和文にはまだほとんど見られないが ,中世から盛んになり ,主として漢文訓読文や和漢混交文に多く見られた 。(2 )命令形 「たれ 」は ,古文ではほとんど用いられず ,近代の文語文で時に用いられるにすぎない 〕
たり
たり (並立助 )〔完了の助動詞 「たり 」の終止形 「たり 」から 。中世末期以降の語 〕活用語の連用形に接続する 。ガ ナ バ マ行五 (四 )段活用の動詞に付く場合には 「だり 」となる 。① 並行する ,あるいは継起する同類の動作や状態を並べあげるのに用いる 。普通 ,「…たり …たり 」のように ,「たり 」を二つ重ねて用いる (時に ,末尾の 「たり 」のあとに 「など 」を添えていうこともある )。「人が出 ―入っ ―している 」「本を読ん ―(だり )手紙を書い ―するひまもない 」「大きかっ ―小さかっ ―などして ,なかなかからだに合うのがない 」② (副助詞的用法 )一つの動作や状態を例としてあげ ,他に同類の事柄がなおあることを暗示する 。「あの子は ,親にたてつい ―して ,ほんとうに困ったものだ 」「わたしが人をだまし ―などするものですか 」③ (終助詞的用法 )同じ動作を 「…たり …たり 」と繰り返してあげ ,命令や勧誘の意を表す 。「さあ ,早く起き ―起き ―」「そこに居てはじゃまだ 。どい ―どい ―」