Sanseido Dictionary
ものを
ものを 〔形式名詞 「もの 」に古語の間投助詞 「を 」の付いたものから 〕活用語の連体形に接続する 。一 (接助 )① 不満やうらみなどの気持ちをこめて ,逆接的に下に続ける 。…のに 。…ものだのに 。「早くすればいい ―,何をぐずぐずしているのだろう 」「そっとしておいた ―,いまさら荒だてなくてもいいじゃないか 」「宮人の安眠 (やすい )も寝ずて今日今日と待つらむ ―見えぬ君かも 」〈万葉集 3771 〉「我もうらなくうち語りて慰め聞えてむ ―,思はずにのみ取りない給ふ御心づきなさに 」〈源氏物語 紅葉賀 〉② 順接的に下に続ける 。…ものだから 。「みんなの意見だ ―,変えることはできないよ 」「一文からの商で日がな一日居たり立つたりする ―,腹もへらうぢやあねえか 」〈滑稽本 浮世風呂 3 〉二 (終助 )① 強い詠嘆 ,話し手の確認の気持ちを表す 。「あら ,それでもわたくしにゃ何だかわかりません ―」「さ雄鹿の来立ち鳴く野の秋萩は露霜負ひて散りにし ―」〈万葉集 1580 〉「猫の経上りて猫またに成りて人とることはあなる ―」〈徒然草 89 〉② 不満 不平や悔恨などの気持ちをこめての詠嘆の意を表す 。…のになあ 。「あの時もっと注意しておけばよかった ―」「わざわざ雨の中を来なくても ,電話一本ですむ ―」「ぬばたまのその夜の梅をた忘れて折らず来にけり思ひし ―」〈万葉集 392 〉「雀の子を犬君 (いぬき )が逃しつる 。伏籠 (ふせご )のうちにこめたりつる ―」〈源氏物語 若紫 〉〔 2 が本来の用法で , 1 は 2 から転じたもの 〕