Sanseido Dictionary
らる
らる (助動 )活用 られ られ らる らるる らるれ られよ 自発 受け身 可能 尊敬の助動詞 。下二段型活用 。ただし ,自発 可能の意を表す場合には ,命令形は用いられない 。上一段 下一段 上二段 下二段 カ行変格 サ行変格活用の動詞 ,および使役の助動詞 「す 」「さす 」の未然形に付く 。① 自発の意 ,ある動作が自然に ,また無意識的に実現してしまう意を表す 。「来し方行くさきおぼし続け られ て 」〈源氏物語 賢木 〉「住みなれしふるさと ,かぎりなく思ひ出で らる 」〈更級日記 〉「さやうの所にてこそよろづに心づかひせ らるれ 」〈徒然草 15 〉② 受け身の意 ,他から何らかの動作 作用の影響を受ける意を表す 。「そこらの人々の害せ られ なむとしけり 」〈竹取物語 〉「ありがたきもの ,舅 (しゆうと )にほめ らるる 婿 」〈枕草子 75 〉「問ひつめ られ て ,え答へずなり侍りつ 」〈徒然草 243 〉③ 可能の意 ,ある動作をすることができる意を表す 。古くは ,打ち消しの語を伴って ,不可能の意を表すのに多く用いられた 。「手も触れで月日経にける白まゆみ起き伏し夜は眠 (い )こそ寝 られ ね 」〈古今和歌集 恋二 〉「いで ,いと興あることいふ老者 (ろうざ )たちかな 。さらにこそ信ぜ られ ね 」〈大鏡 序 〉「起きあがらんとすれども ,なじかは起き らる べき 」〈源平盛衰記 33 〉④ 尊敬の意を表す 。他人の動作を表す語に付いて ,動作者に対する敬意を表す 。もともと敬意を含んでいる動詞に付くことが多い 。「乳母かへてむ 。いとうしろめたし ,と仰せ らるれ ば 」〈枕草子 9 〉「御坪のうちに引き出だされて ,重盛が首 (こうべ )のはね られ んことは ,安いほどの事でこそ候へ 」〈平家物語 2 〉「負けたらん人は供御 (くご )をまうけ らる べし 」〈徒然草 135 〉〔(1 )「る 」と意味 用法は同じであるが ,未然形がア段となる動詞には 「る 」が付き ,それ以外の場合には 「らる 」が付くというように ,接続のしかたに分担がある 。(2 )上代では ,「らゆ 」の語が用いられ ,「らる 」の形はまだ見られない 。「らる 」は中古以降に用いられるようになる 。(3 )中世には連体形 「らるる 」が終止法として用いられるようになり ,命令形には 「られい 」が現れるが ,やがて一段活用化して 「られる 」となり ,現代にまで及ぶ 〕 →られる (助動 ) →らゆ (助動 ) →る (助動 )