Sanseido Dictionary
参る
まい る まゐる 1 【参る 】(動 ラ 五 [四 ])〔「参 (まゐ )入 (い )る 」の転 〕一 自動詞 ① ❶ 「行く 」「来る 」の意の謙譲語 。動作の及ぶ相手を敬う 。聞き手と動作の及ぶ相手とが一致している場合に用いられる 。「また明日二時に ―ります 」「お客さま ,お迎えの車が ―りました 」「はい ,すぐにそちらへ ―ります 」② 「行く 」「来る 」の意の丁寧語 。聞き手への敬意をこめていう 。「駅までご一緒に ―りましょう 」「このバスは市役所へ ―りますでしょうか 」③ 神社 寺院や墓へ行って拝む意の謙譲語 。もうでる 。参詣する 。お参りする 。「菩提寺に ―る 」④ 「行く 」「来る 」意の尊大語 。上位者が下位者の行為を低めていう 。「わしはあとから行くからお前は先に ―れ 」「早くこちらへ ―れ 」⑤ 相手の力や能力に負けて降参したということを相手に表明する語 。「『どうだ ―ったか 』『うん ,―った 』」「おみごと ,―りました 」「貴兄の卓説には ―りました 」⑥ 事態に対応できなかったりして ,困惑 閉口している気持ちを表す 。「彼のせっかちには ―るよ 」「―ったなあ ,この渋滞には 」⑦ 困難な状況にあって ,肉体や精神が弱る 。「徹夜続きで体が ―ってしまう 」「激務で神経が ―る 」「今年の夏の暑さには ―った 」⑧ (多く相手を卑しめて )死ぬ 。「ついに彼も ―ったか 」⑨ (多くは 「まいっている 」の形で )ある異性にすっかりほれる 。「彼は奥さんにぞっこん ―っている 」「彼はあの子の魅力にすっかり ―っているらしい 」⑩ 補助動詞 動詞の連用形に助詞 「て 」の付いたものに付いて ,補助動詞 「行く 」「来る 」に謙譲の意を添えて言い表す 。「早速品物を持って ―ります 」「田舎から出て ―りましたばかりで ,とんと勝手がわかりません 」① ❷ 貴人のいる場所 ,貴い場所へ移動する 。「春宮 (とうぐう )の生れ給へりける時に ―りてよめる 」〈古今和歌集 賀詞 〉「とく装束 (そうぞ )きてかしこへお ―れ 」〈蜻蛉日記 下 〉② 「行く 」「来る 」の意の謙譲語 。古くは聞き手と動作の及ぶ相手とが一致しない場合にも用いる 。「前の川原へ ―りあはん 」〈徒然草 25 〉「その有りさま ,―りて申せ 」〈徒然草 238 〉③ 貴人に奉公するためにそのもとへ行く 。出仕する 。「宮に初めて ―りたるころ 」〈枕草子 184 〉④ 入内 (じゆだい )する 。「十六にて故宮に ―り給ひて ,二十にておくれ奉り給ふ 」〈源氏物語 賢木 〉二 他動詞 ① 貴人に対する下の者の動作の謙譲語 。貴人に品物を献上する 。進上する 。さしあげる 。「親王 (みこ )に馬の頭 (かみ )大御酒 (おおみき )―る 」〈伊勢物語 82 〉「御手水 (ちようず )とり具して ―りたり 」〈落窪物語 1 〉「箏の御琴 ―りたれば ,少し弾き給ふも 」〈源氏物語 明石 〉貴人のために ,何らかの動作をする 。してさしあげる 。「掃部司 (かもんづかさ )参りて御格子 ―る 」〈枕草子 278 〉「まだ大殿油も ―らざりけり 」〈源氏物語 東屋 〉「御ゆする (=洗髪 )―り ,御衣着かへなどし給ひて 」〈源氏物語 葵 〉(この手紙を差し上げます ,の意から )手紙の脇付に用いる語 。「小春様 ―る 」〈浄瑠璃 心中天網島 上 〉② 貴人の動作の尊敬語 。「食う 」「飲む 」の尊敬語 。召し上がる 。「今は粥など ―りて 」〈蜻蛉日記 上 〉ある動作をする ,または ,ある動作を受ける意の尊敬語 。「夜深く ,御手水 ―り 」〈源氏物語 須磨 〉「大殿油短く ―りて御覧ずるに 」〈源氏物語 梅枝 〉「こよひはなほ静かに加持など ―りて出でさせ給へ 」〈源氏物語 若紫 〉可能 まいれる