Sanseido Dictionary
掛ける
か ける 2 【掛ける ・懸ける 】(動 カ 下一 )《文 カ下二 か く 》❶ 物をほかの物に取り付ける 。① 物を壁や構造物の高い所に運んで行って上部を固定する 。上方に掲げる 。他の物にぶらさげる 。「壁に絵を ―ける 」「戸口に表札を ―ける 」「窓にカーテンを ―ける 」「帆を ―けた船 」② 〔自在鉤にかけて火の上に置いたことから 〕鍋などを火の上にのせる 。「鍋を火に ―ける 」③ 〔竿秤 (さおばかり )の鉤にかけて重さを測ったことから 〕はかりに載せて重さを測る 。「肉を秤に ―ける 」④ 椅子などの上に座る 。「椅子に腰を ―ける 」⑤ 人を ,罰として高い所につるしたり置いたりする 。「罪人を十字架に ―ける 」「獄門に ―ける 」⑥ 物を ,取り外しのできるような状態で他の物に取り付ける 。「眼鏡を ―けた人 」「上着のボタンを ―ける 」⑦ 組んだもので獲物を捕らえる 。「兎をわなに ―ける 」「計略に ―ける 」⑧ (「気にかける 」などの形で )気持ちをそこに置く 。いつもそのことに対して配慮する 。思いやる 。「子の将来を気に ―ける 」「心に ―ける 」「歯牙 (しが )にも ―けない 」⑨ 相撲で ,足を相手の足にからめる 。「右足を ―けて相手を倒す 」⑩ 錠などを固定して動かないようにする 。「ドアに鍵を ―ける 」「犯人に手錠を ―ける 」❷ 上方から物を置く 。① ある物を ,他の物を覆うように置く 。かぶせる 。「荷物の上に覆いを ―ける 」「床にワックスを ―ける 」② 液体や粉末を上方から注ぐ 。「背中にお湯を ―ける 」「肉にコショウを ―ける 」「ご飯に生卵を ―けて食べる 」「振り ―ける 」「あびせ ―ける 」❸ 他にある作用を与える 。他に影響を及ぼす 。① 好ましくないことを相手に及ぼす 。「妻にはずいぶん苦労を ―けてきた 」「他人に迷惑を ―ける 」② 人に対してある感情を持つ 。「先輩に思いを ―ける 」「犯人に情けを ―ける 」「…に疑いを ―ける 」願い 期待をそこに置く 。託す 。「神様に願 (がん )を ―ける 」「ひとり息子に期待を ―ける 」「…に一縷 (いちる )の望みを ―ける 」③ 言葉などによる働きかけをする 。言葉を人に向けて発する 。「部下に言葉を ―ける 」「生徒に声を ―ける 」言葉による働きかけを行う 。「相手になぞを ―ける 」「新入生に誘いを ―ける 」「おどしを ―ける 」④ 魔法 麻酔など特別な作用を及ぼす 。「お姫様に魔法を ―ける 」「患者に麻酔を ―ける 」「絶対勝つんだ ,と自分を暗示に ―ける 」⑤ (力を )加える 。「右足に体重を ―ける 」「一方の電極に電圧を ―けると …」⑥ 道具を用いて表面を加工する 。「材木にかんなを ―ける 」「やすりを ―ける 」「ワイシャツにアイロンを ―ける 」「ミシンを ―ける 」「廊下に雑巾を ―ける 」「丸太にみがきを ―ける 」⑦ 課す 。「贅沢品に重い税を ―ける 」⑧ 攻撃を加える 。「夜襲を ―ける 」「相手に技を ―ける 」「追い討ちを ―ける 」❹ ある物を他の物に渡す 。また作用を一方から他方へ向ける 。① (「架ける 」とも書く )一方から他方へさし渡す 。「川に橋を ―ける 」「二階にはしごを ―ける 」② 電話機を操作して先方と話をする 。「会社に電話を ―ける 」③ 手や足など体の一部をほかの物の上に軽くおく 。「ドアの取っ手に手を ―ける 」「階段に片足を ―ける 」❺ 取り扱う 。対象として扱う 。① 論議 審議の対象にする 。「この問題を会議に ―ける 」「被告を裁判に ―ける 」② 検査 診察の場所 場面に置く 。「薬品を分析装置に ―ける 」「…を医者に ―ける 」③ 相手に見えるようにする 。「私の秘蔵の品をお目に ―けます 」④ 人を殺傷する 。「敵を刀に ―ける 」「我が子を手に ―ける 」「蹄 (ひづめ )に ―ける 」❻ 機械を機能させる 。「自動車のエンジンを ―ける 」「ブレーキを ―ける 」「ラジオを ―けっぱなしにする 」「レコードを ―ける 」❼ (「繫ける 」とも書く )結びつけて留める 。つないで留める 。「小包に紐を ―ける 」「たすきを ―けて掃除をする 」① ❽ ある場所に仮設の建物などを組み立てる 。「河原に小屋を ―ける 」「小鳥が街路樹に巣を ―ける 」② 芝居や興行を行う 。「来月は勧進帳を ―ける予定 」① ❾ 数を乗ずる 。掛け算をする 。 ↔割る 。 「2に3を ―けると6 」② 基準の値段より割高な値段を付ける 。掛け値をする 。「市価よりも二割がた ―けて売る 」③ (「保険をかける 」の形で )ある物について保険の契約をして掛け金を払う 。「美術品に保険を ―ける 」❿ 言葉と言葉に関連を持たせる 。① ある語句と他の語句との間に意味関係や文法関係をもたせる 。「関係代名詞を名詞句に ―ける 」② 掛け言葉を言う 。「『長雨 』を 『眺め 』に ―ける 」③ かこつける 。意味づける 。「妹が名に ―けたる桜 」〈万葉集 3787 〉① ⓫ 時期 場所について ,ここからそこまでの間ずうっと 。「夏から秋に ―けて咲く花 」「宮城県から青森県に ―けて大雪だ 」② それに関して 。その面で 。「暗算に ―けては彼の右に出る者がない 」⓬ あること 物のために費用 労力 時間などを費やす 。「服装に金を ―ける 」「手間ひま ―けて作った人形 」⓭ 交配する 。「レグホンにコーチンを ―ける 」⓮ (「鼻にかける 」の形で )① 鼻声を出す 。「鼻に ―けて歌う 」② 自慢する 。「一流大学を出たことを鼻に ―ける 」⓯ (動詞の連用形の下に付いて )① 相手に向かって物事をする 。「話し ―ける 」「働き ―ける 」② …し始める 。途中まで …する 。「言い ―けてやめる 」「長編を読み ―ける 」③ もう少しで ,ある動作を始めそうになる 。もう少しでそういう状態になる 。「死に ―ける 」「川でおぼれ ―ける 」① ⓰ 兼ねる 。「国の守 ,斎 (いつき )の宮のかみ ―けたる 」〈伊勢物語 69 〉② 目標にする 。目指す 。めがける 。「阿波の山 ―け漕ぐ舟 」〈万葉集 998 〉③ よりどころにする 。託する 。「かくたまさかの御慰めに ―け侍る命のほども 」〈源氏物語 澪標 〉④ 含める 。こめる 。「行く末 ―けて契りたのめ給ひし人々 」〈源氏物語 松風 〉⑤ 乗り物などをある場所に止める 。車をある場所に止める 。つなぐ 。「さて車 ―けてその崎にさしいたり 」〈蜻蛉日記 中 〉船をある場所に停泊させる 。係留する 。日葡 牛馬をある場所につなぐ 。「輪強き御車にいちもちの御車牛 ―けて 」〈大鏡 道隆 〉⑥ あらかじめ約束する 。「秋 ―けて言ひしながらもあらなくに木の葉降りしくえにこそありけれ 」〈伊勢物語 96 〉⑦ だます 。ひっかける 。「今来むと言ひしばかりに ―けられて 」〈古今和歌六帖 5 〉⑧ 数に入れる 。加える 。「お供 ―けて三人ぢや 」〈浄瑠璃 丹波与作待夜の小室節 中 〉〔「かかる 」に対する他動詞 〕慣用 圧力を ―後足で砂を ―命を ―腕に縒 (よ )りを ―鎌を ―声を ―尻に帆を ―尻目に ―手に ―手を ―手塩に ―天秤 (てんびん )に ―秤 (はかり )に ―拍車を ―股に ―水を ―目を ―山を ―輪を ―表記 かける 《掛 ・懸 ・架 ・繫 ・賭 》「掛ける 」は “ぶらさげる 。作用を及ぼす 。費やす ”の意 。「壁に絵を掛ける 」「計略に掛ける 」「妻には苦労を掛けた 」「衣服に金を掛ける 」「手間暇掛けて育てた菊 」「懸ける 」は “運命をともにする 。金品を提供する ”の意 。「一生を懸けた仕事 」「犯人に賞金を懸ける 」「架ける 」は “かけ渡す ”の意 。「川に橋を架ける 」「繫ける 」は “つないで留める ”の意 。「ひもを繫ける 」「賭ける 」は “かけごとをする 。失う覚悟でする ”の意 。「最後のレースに賭ける 」「命を賭けた恋 」