Sanseido Dictionary
渡る
わた る 0 【渡る 】(動 ラ 五 [四 ])① 人 動物 乗り物が ,川 海や道などを横切って向こう側へ移動する 。〔水の場合は 「渉る 」とも書く 〕間をさえぎるものを越えて ,向こう側に移る 。「太平洋を船で ―る 」「川を泳いで ―る 」「通りを ―る 」橋や通路を通って向こう側に移る 。「橋を ―る 」「横断歩道を ―る 」「踏切を ―る 」海などで隔てられた地点へ移動する 。外国へ行く 。「シベリアから日本へ ―って来る白鳥 」「彼は若い時に南米へ ―って農場を始めた 」風などが ,ある場所を通って吹く 。「梢 (こずえ )を ―る風 」「水面 (みなも )を ―る風が快い 」② あちらこちらと移る 。「あちこちの店を ―ってきた職人 」③ 世間の人々の間で暮らしてゆく 。生きてゆく 。「巧みに世の中を ―ってゆく 」「―る世間に鬼はない 」「いかにしつつか汝が世は ―る 」〈万葉集 892 〉④ 物が ,ある人の手元から他の人へ移動する 。(主に 「…の手に渡る 」の形で )ある人の所有物が他の人のものとなる 。「先祖伝来の田畑 (でんぱた )も今はみな人手に ―ってしまった 」「極秘書類が他社の手に ―る 」物を複数の人に配って ,それぞれの人の手に届く 。ゆきわたる 。「この資料は出席者全員に ―るだけ用意してある 」⑤ 〔「亘る 」とも書く 〕ある範囲に及ぶ 。要する時間 回数 数量が ,ある大きな数値に達する 。「この問題については ,一〇〇ページに ―って詳しく論ぜられている 」「再三に ―って警告した 」「二か月に ―る大旅行 」広い範囲に及ぶ 。くまなく及ぶ 。「各分野に ―る広い学識を備えている 」「研究は多岐に ―っている 」「原因を細部に ―って調べる 」「話が私事に ―って恐縮ですが …」一方から他方に及ぶ 。「公私両面に ―ってお世話になった 」「この三時の業 ,善悪に ―るなり 」〈正法眼蔵 〉⑥ 他の動詞の連用形に付いて ,その動作が続く意を表す 。広い範囲に …する 。一面に …する 。「青み ―る 」「知れ ―る 」長い時間 …する 。…し続ける 。「命死ぬべく恋ひ ―るかも 」〈万葉集 599 〉⑦ ある場所へ行く 。また ,ある場所へ来る 。「上にも聞こし召して ,―りおはしましたり 」〈枕草子 9 〉⑧ 人 乗り物がある地点を通過する 。「ある御達の局の前を ―りけるに 」〈伊勢物語 31 〉⑨ 鳥が空を飛ぶ 。太陽や月が空を移動する 。「はつかりの鳴きて ―ると 」〈古今和歌集 恋四 〉⑩ 広がる 。広く及ぶ 。「雲の薄く ―れるが 」〈源氏物語 薄雲 〉⑪ 年月がたつ 。年月を送る 。「ありさりて後も逢はむと思へこそ露の命も継ぎつつ ―れ 」〈万葉集 3933 〉⑫ (尊敬を表す語と共に用いて )「ある 」「いる 」の尊敬語 。おありになる 。いらっしゃる 。「君の御世に ―らせ給はんを見参らせで死に候はん事 」〈平家物語 11 〉⑬ 補助動詞 形容詞 形容動詞の連用形および断定の助動詞 「なり 」の連用形 「に 」,または ,それに接続助詞 「て 」を添えたものに付く 。叙述の意を添える 「ある 」を敬っていう 。…でいらっしゃる 。…でおいでになる 。「おろかに ―らせ給ふ物かな 」〈曽我物語 3 〉「さきのきさいの宮にて ,幽なる御ありさまにて ―らせ給ひしかば 」〈平家物語 1 〉〔「渡す 」に対する自動詞 〕可能 わたれる 慣用 危ない橋を ―石橋を叩 (たた )いて ―世を ―