Sanseido Dictionary
空蟬
うつせみ 【空 蟬 】〔「うつしおみ (現人 )」の転 。「うつそみ 」とも 。「空蟬 」は当て字 〕① この世の人 。生きている人間 。「―と思ひし妹が玉かぎるほのかにだにも見えなく思へば 」〈万葉集 210 〉人間の生きているこの世 。現世 。世間 。「―はもの思 (も )ひ繁し 」〈万葉集 4189 〉② 〔「空蟬 」「虚蟬 」と表記したところから 〕蟬のぬけ殻 。季 夏 「―を妹が手にせり欲しと思ふ 」山口誓子 「―の身をかへてける木の下に 」〈源氏物語 空蟬 〉蟬 。「夏は ―なきくらし 」〈古今和歌集 雑体 〉
空蟬
うつせみ 【空蟬 】① 源氏物語の巻名 。第三帖 。② 源氏物語の作中人物 。伊予介の後妻 。継子 (ままこ )である紀伊守の邸で方違 (かたたが )えに来た光源氏に身を許すが ,その後は自省して源氏の愛を拒み続ける 。夫の死後出家 。