Sanseido Dictionary
自然主義
しぜん しゅぎ 4 【自然主義 】〔 naturalism 〕① 〘哲 〙 存在や価値の根本に自然を考える立場の総称 。一般に ,超自然的なもの (理想 規範 超越者など )の独自性を認めず ,自然的なもの (物質 感覚 衝動 生命など )を基盤にして物事をとらえる 。倫理学で ,善や規範を超越的な原理からではなく ,感覚的経験から導出する説 。また ,内的あるいは外的自然に即した生活を旨とする主義 。宗教上では ,「神即自然 」というスピノザの思想のような汎神 (はんしん )論にほぼ同じ 。② 一九世紀後半に興った文芸思潮 。観察を標榜する近代のリアリズム (写実主義 )の延長上に ,これを科学的に徹底し ,理想化を排し人間の生の醜悪 瑣末 (さまつ )な相までをも描出する 。フランスのゾラ モーパッサンなどが代表 。この影響のもとに ,日本では明治後期に島崎藤村 田山花袋などが輩出した 。③ 美術で ,自然の事物を忠実に再現しようとする作画態度 。古典ギリシャの美術などにもみられるが ,特に一七世紀イタリアのカラバッジョやその後継者たち ,さらには一九世紀中頃のテオドール =ルソーらバルビゾン派や一九世紀後半のクールベらの写実主義をさす 。